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LIFE ESSay 『人生の答えは、いつも“途中”にある』APR 25.2025-Mor.Friday

若いころは、「人生にはちゃんと答えがある」と思っていた。 やりたいこと、進むべき道、選ぶべき正解。 たくさん悩んで、考えて、間違わないように生きるのが“いい人生”だと。

でも歳を重ねるごとに、その「正解」がどこにもないことに気づき始めた。


どれだけ真剣に選んだ道でも、あとから「違ったかも」と思うことがある。 逆に、迷って仕方なく選んだ道が、意外にも自分を救ってくれたりもする。

つまり、人生には“ゴール”より“途中”の方が大事なのかもしれない。



朝、パンが少し焦げた。 それだけで一日がうまくいく気がしなくて、 ふてくされていた自分が、昼過ぎに友人の一言で救われた。

夕方、買い物帰りに道に迷って、 知らないパン屋に入ったら、涙が出るほど美味しいスコーンに出会った。

予定通りにいかなくてよかった。 それがなければ、この偶然には出会えなかった。

人生の中には、こういう“ズレ”や“ブレ”が 大切な瞬間を連れてくることがある。



たとえば、今の自分に満足していない人がいるとしたら。 何者にもなれていない気がする人がいるとしたら。

それでも、今、何かを考えている“途中”にいるなら、 それだけで十分、価値があると思う。

誰かに追いつこうとしたり、 完璧なかたちにしようと焦ったり、

そういう“終わり”を求めるより、 “考えながら歩いている自分”に目を向けてみてもいい。



私は、いまだに人生の問いにちゃんと答えられない。 だけど、問いの途中で出会う人や言葉や景色が、 たまらなく愛おしいと思えるようになった。

それって、答えよりずっと確かな“答え”かもしれない。



誰かの一言が支えになったり、 何気ない一日の中に、ヒントみたいな瞬間があったり。

そういう“途中”をちゃんと見つめられる人でありたい。

いつか人生が終わるとき、 「あの時間が、答えだったのかもしれない」と、 静かに思えるような終わり方ができたら。

きっと、わたしはそれでいいと思える。