
「もういいよ」なんて、軽々しく言えたら、どれだけ楽だろう。
でも正直、いまだに許せてないことがある。 あたしの中には、あの瞬間の温度と痛みがそのまんま残ってる。
許せって言われるたび、 「そんな簡単に消えるもんじゃないんだよ」って、 叫びたくなる気持ちになる。
昔、すごく仲の良かった友達がいた。 何でも話してたし、夜中の電話も、くだらないLINEのスタンプも、 全部、日常だった。
でもある日、ふとした言葉で崩れた。 たぶん向こうに悪気はなかった。 でも、あたしには深く突き刺さってしまった。
それ以来、ちゃんと話してない。 許してもいいのかもしれないけど、 どこかで、「許さない自分」が自分を守ってる気がする。
「忘れたら楽になるよ」 って言う人もいるけど、 忘れたくないんだよね。
あのときの自分を裏切りたくない。 あのとき傷ついた自分に、 「そんなのどうでもよかったんだ」って言いたくない。
だから、許さない。 というより、許せないままでいることに意味がある気がしてる。
でもね。 それを大事にしすぎて、 人に心を開けなくなったり、 誰かを疑う癖がついてるのも、ちょっとわかってる。
許さないことで守ってるのは、 自分のプライドかもしれないし、 あのとき泣いた自分の存在価値かもしれないし、 ほんとうは、今の“ちょっと弱ってる自分”だったりする。
最近は思うんだ。 「許す」って、誰かを解放することじゃなくて、 たぶん、あたし自身をちょっとだけ楽にする方法なのかもしれないって。
まだできないけど、 いつか「許す」が選べる日が来たらいいな、って思ってる。
それまでは、 「許さないあたし」も、ちゃんと抱えて、生きていこうと思う。
だって、どっちにしたって、 あたしがあたしを守らなきゃいけないことに、 変わりはないから。
Epilogue
たぶん許せなくても、
ほんとはずっと、許されたいと思ってる。

だから今日くらいは、自分のこと、ちょっと甘やかしていいよね。