

誰かと一緒にいることが“正解”とされる世界で、 一人でいることを「寂しい」と決めつける空気に、私はずっと違和感を抱いてきた。
もちろん、愛し合えるパートナーがいて、 寄り添える誰かがいることは素晴らしい。 でも、それと同じくらい、一人で過ごす時間にも、 かけがえのない美しさがあると思っている。
孤独というのは、 不在ではなく“選択”でもある。
私は過去、誰かと暮らしたこともあるし、 深い関係性を築いたこともある。 けれど、あるときふと思ったのだ。
「この人のために生きることと、自分であること、 どこで境界線を引けばいいんだろう?」
気づかぬうちに、自分を抑えていた。 相手に合わせることが“愛”だと錯覚していた。
ある日、旅先の海辺で、 誰にも会わず、話さず、ただ波の音を聞いていた。
気づけば何時間も、 誰の視線も気にせず、 ただ「自分だけの時間」を味わっていた。
そのとき初めて、私は 「孤独って、なんて贅沢なんだろう」と思った。
誰にも気を遣わず、 誰の機嫌も伺わず、 誰の価値観にも左右されず、 ただ、自分という存在と静かに向き合う時間。
それは、世間のいう“寂しさ”とは、まったく別のものだった。
もちろん、人は一人では生きていけない。 人間関係は大切だし、つながりを否定するつもりはない。
でも、誰かとの関係性の中にこそ、 自分の輪郭を保つ“ひとりの時間”が不可欠だ。
ひとりを恐れずにいられる人こそ、 ほんとうの意味で誰かと並び立つことができる。
依存でも妥協でもなく、 「私は私、あなたはあなた」と言える関係は、 孤独を知っている人だけが築ける贅沢なパートナーシップだと思う。
孤独は、選ばれた人だけが味わえる“静かな富”。 それは、誰のためでもなく、 自分のために灯す心のランプ。
そして、その明かりがある人にこそ、 誰かがふと寄り添いたくなるのかもしれない………
Epilogue
孤独は贅沢。静けさは強さ。
誰かと出会うその時まで、自分を美しく整えておくために。