
誰にも言えなかったけど、 ときどき全部を手放して、どこか遠くへ行きたくなる。
スマホも、予定も、人間関係も置いて、 名前も役割もぜんぶ脱ぎ捨てて、 静かな場所で、ただひとりになりたいと思う。
でもそれは、「消えたい」んじゃない。 ほんとうはただ、「少し休みたいだけ」なんだ。
毎日、誰かの言葉に反応して、 愛想よく笑って、当たり障りなく過ごす。
いい人って、しんどい。 でも、それを崩す勇気がない。
だから、笑ってる。 ほんとうは、何も感じられない日だってあるのに。
「がんばってるね」って言われるたびに、 泣きたくなる自分がいる。
そんなある日、ふらっと立ち寄った公園で、 ベンチに座って、ただ空を見上げた。
雲が流れていた。 風が頬を撫でていった。
それだけなのに、涙が出た。
わたし、生きてた。 ただ、それだけでよかった。
「がんばらなきゃ」って言い聞かせる日々よりも、 「ちょっと休もうか」って言える自分でいたい。
誰にも迷惑をかけない場所で、 誰の期待にも応えなくていい時間を持つことは、 決して“逃げ”じゃない。
それは、自分を守るための、大切な選択。
今日、うまく笑えなかったとしても。 部屋から出られなかったとしても。 何も生み出せなかったとしても。
それでも、「わたし」は、ちゃんとここにいる。
消えたいわけじゃない。 少し、休みたいだけ。
そう思える日は、きっと少しずつ、自分を取り戻している日なんだと思う。
Epilogue
明日はもう少し、心がやわらかいかもしれない。
だから今日は、ちゃんと休んでいい。
そうして優しく、毛布を掛けてあげるように……