
― 「誰かに食べてもらえる」と信じていた。
わたしの名前は、「コメ太郎」。
生まれたのは5年前。
棚田で育ち、秋風に揺れて、やがて刈り取られた。
「大事に使わせていただきます」と祈られながら袋に詰められ、
わたしは、倉庫に運ばれた。
それから、ずっとここにいる。
動かず、黙って、冷たく、暗いまま──
備蓄という名の“幽閉”
わたしたちは「備え」と呼ばれる。
だけど一度、“備えられた”ら最後、もう誰の口にも入らない。
賞味期限が切れた仲間は、
ある日突然、“廃棄”という名の火にくべられる。
わたしたちは、「生きる糧」になるはずだった。
なのに今では、“数字を守る証拠品”になってしまった。
「あなたのために炊かれる」と思ってた
子どもが笑う食卓に並ぶこと。
受験前の夜に握られるおにぎりになること。
災害で疲弊した人の心に寄り添う白飯になること。
──そんな夢を持っていた。
けれど、現実は違った。
倉庫の壁は厚い。数字の壁はもっと厚い。
配られない理由はたくさんあるらしい。
「価格の安定」
「市場調整」
「農業政策上の問題」
「災害レベルの定義」……
でもね、人間の空腹には、
そんな理屈、関係ないよね?
わたしたちはただ、
「誰かに食べてほしかった」だけなんだ。
PERSOna Essayistの声(Momo)
物言わぬ存在にこそ、社会の歪みは潜んでいる。
“語られない米”は、“見捨てられた生活”そのものだ。
食卓に届かないお米は、
無駄ではなく──
届くべき場所に届かなかった、“希望の断片”だ。
読者への問い
あなたの食卓に、
“本当はここに来るはずだった誰かのコメ”が届いていませんか?
#PERSOnaEssayist #白き粒の沈黙 #届かぬ米の声 #語る備蓄米 #倉庫に眠る希望
次回予告|
第4話:炊かれぬご飯、腹が鳴る制度
制度そのものが、語り始める。
沈黙が、ひとつの人格として問いを投げかける――