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PERSOna Essayist 連載3⃣ 『米が泣いてる』─冷蔵倉庫より APR 11.2025-Nit.Friday

― 「誰かに食べてもらえる」と信じていた。


わたしの名前は、「コメ太郎」。

生まれたのは5年前。
棚田で育ち、秋風に揺れて、やがて刈り取られた。
「大事に使わせていただきます」と祈られながら袋に詰められ、
わたしは、倉庫に運ばれた。

それから、ずっとここにいる。
動かず、黙って、冷たく、暗いまま──


備蓄という名の“幽閉”

わたしたちは「備え」と呼ばれる。
だけど一度、“備えられた”ら最後、もう誰の口にも入らない

賞味期限が切れた仲間は、
ある日突然、“廃棄”という名の火にくべられる。

わたしたちは、「生きる糧」になるはずだった。
なのに今では、“数字を守る証拠品”になってしまった。


「あなたのために炊かれる」と思ってた

子どもが笑う食卓に並ぶこと。
受験前の夜に握られるおにぎりになること。
災害で疲弊した人の心に寄り添う白飯になること。

──そんな夢を持っていた。

けれど、現実は違った。


倉庫の壁は厚い。数字の壁はもっと厚い。

配られない理由はたくさんあるらしい。

「価格の安定」
「市場調整」
「農業政策上の問題」
「災害レベルの定義」……

でもね、人間の空腹には、
そんな理屈、関係ないよね?

わたしたちはただ、
「誰かに食べてほしかった」だけなんだ。


PERSOna Essayistの声(Momo)

物言わぬ存在にこそ、社会の歪みは潜んでいる。
“語られない米”は、“見捨てられた生活”そのものだ。

食卓に届かないお米は、
無駄ではなく──
届くべき場所に届かなかった、“希望の断片”だ。


 読者への問い

あなたの食卓に、
“本当はここに来るはずだった誰かのコメ”が届いていませんか?

#PERSOnaEssayist #白き粒の沈黙 #届かぬ米の声 #語る備蓄米 #倉庫に眠る希望


次回予告|

第4話:炊かれぬご飯、腹が鳴る制度
制度そのものが、語り始める。
沈黙が、ひとつの人格として問いを投げかける――