子どもの頃、大人たちはよく言った。
「大人になったら分かるよ」って。
あの言葉の意味は、
きっと、人生の仕組みとか、人間関係の妙とか、お金の大切さとか、
まあそういう
「生きるコツ」みたいなものを言っていたのだろう。
で、40代になった今。
何も分からん。
会社で後輩に
「人生ってこういうもんだよ」と偉そうに語る同世代を見かけるけど、
本当か？
いや、ただ知ったかぶりしてるだけでは？
そういう私も「大人」だけど、
人生の正解なんて今も見えてこない。
子どもの頃、
思い描いていた40代は、もっとちゃんとした大人だった。
スーツを着こなし、
貯金もしっかりして、家庭も持ち、
人生設計がガッチリ決まっている。
だけど実際は、
スーパーの総菜コーナーで半額シールが貼られるのを待ち、
ネットの情報に振り回され、
部屋の隅でホコリを被った健康器具を見て見ぬふりをしている。
「大人になったら分かる」は、
結局のところ、ただの逃げ口上だったんじゃない
かと思う。
分からないことを分からないまま、
誰かに説明するのが面倒だから、
適当に言いくるめるための呪文だったんじゃないかと。
だけど、
分からなくても生きていけるのが人間のすごいところ。
分からないなりに、何となくやり過ごして、
時には失敗しながらも何とかやっていく。
大人って、結局そんなものなんじゃないかと思う。
だから、
もし若い人に「大人になったら分かるよ」と言いそうになったら、
ちょっと待った。
たぶん、分からんまま死ぬから。
それより、
「分からないことだらけだけど、
まあ、それでも何とかなるよ」と言う方が、
よほど誠実な気がする。
