
「愛に、正しいタイミングなんてあるのだろうか」
出会った瞬間に、運命を感じたことがある。
「この人だ」と確信したのに、
時間が経つにつれて、その確信が揺らいだこともある。
逆に、「この人は違う」と思った人が、
何年も経ってから、大切な存在になったこともある。
恋に早すぎるも遅すぎるもない。
それでも、「あと少しだけ早く」「あと少しだけ遅く」そう思わずにはいられない恋が、ある。
「早すぎた恋」
彼と出会ったのは、仕事も、生活も、ようやく安定してきた頃だった。
お互いに惹かれ合った。
けれど、何かが足りなかった。
彼はまだ未来の形を決められずにいて、
私は、過去を整理しきれていなかった。
「今じゃなかったのかもしれない」
そう思いながら、私たちは、簡単に別れた。
そして数年後、別の誰かといる彼を見かけたとき、「もしあのとき、もう少しだけ待っていれば」と思った。
だけど、恋に「待つ」なんていう選択肢はない。
「遅すぎた恋」
長い付き合いの友人がいた。
気の合う相手で、何でも話せる人だった。
「もし、彼と付き合っていたら?」
そんなことを考えたこともあったけれど、
きっと恋人にはならないだろうと思っていた。
でもある日、彼が別の誰かと結婚すると聞いたとき、私はその夜、なかなか眠れなかった。
「もし、もう少しだけ早く気づいていたら」
そんなことを考えても、遅すぎた恋は、どうしようもない。
「早すぎる恋と、遅すぎる恋」
あのとき、もう少しだけ待っていたら。
あのとき、もう少しだけ勇気を出していたら。
けれど、
もし早すぎた恋が、
あと少し遅くやってきたとしても、
それがうまくいく保証はない。
遅すぎた恋が、
もう少し早く訪れていたとしても、
それを掴めたかどうかはわからない。
恋のタイミングは、
いつだって、過ぎてからしかわからないものなのかもしれない。