
「どうして、私たちはこうなったのだろう」
同じ部屋にいるのに、心の距離だけが、少しずつ遠ざかっていく。
そんなことに気づいたのは、二人で並んで歩いていたはずの道のりが、いつの間にか、違う方向に伸び始めていたからだ。
変わったのは彼なのか、それとも私なのか。
いや、どちらでもないのかもしれない。
恋は、いつも最初は燃えるように熱い。
その熱を守るために、人は必死で手を伸ばす。
けれどある日、ふと気づく。
その手は、もう届かない場所にあるのだと。
それは、はっきりとした別れではない。
ただ静かに、しかし確実に、すれ違いは始まっていた。
「交差する想い」
彼の顔を見ているのに、彼の表情の奥にあるものが見えない。
会話はある。けれど、それはかつてのような意味を持っていない。
「最近、忙しい?」
「うん」
それだけ。以前なら、彼はすぐに詳細を話してくれた。どんな仕事をしていて、どんなことに悩んでいるのか。私も、それを聞くことが嬉しかった。
けれど今は、言葉は増えない。
知りたい気持ちはあるのに、聞けない。
聞いてしまえば、何かが決定的に壊れてしまいそうで。
言葉を交わしているのに、互いの想いはすれ違ったままだった。
「すれ違う心」
二人でいたはずなのに、
最近は、どこか独りの時間が増えたように感じる。
食事の時間も合わなくなり、
休日の過ごし方も変わった。
別々の時間を過ごすことは、
恋が冷めた証拠なのだろうか。
それとも、
一緒にいることに安心して、
努力しなくなっただけなのだろうか。
たった一言、
「会いたい」と言えばいいだけなのに。
それが言えなくなるのは、
どうしてなのだろう。
「すれ違いは、決定的な別れではない」
愛は、いつも同じ場所にはいられない。
近づいたり、遠ざかったりしながら、
それでも続いていくものなのかもしれない。
すれ違いが、ただの通過点なのか、
それとも、もう戻れない距離なのか。
それを決めるのは、
きっと、ほんの小さなきっかけなのだろう。
手を伸ばせば、届くのかもしれない。
けれど、その勇気が、今は持てなかった。