
「好きなことを仕事にすれば、人生はもっと楽しくなる」
そう信じて飛び込んだはずなのに、気づけば「好きなこと」が「やらなければならないこと」に変わっていた。
絵を描くのが好きな人がいる。
子どもの頃から夢中になって、時間を忘れて描いていた。
けれど、それを仕事にした途端、「納期」が生まれ、「クライアントの要望」が入り、「売れるかどうか」を考えなければならなくなる。
「自由に描いてください」と言われても、実際には「売れるものを描いてください」と同じ意味だったりする。
好きなことを仕事にするというのは、「好きなことをお金のためにやる」ということだ。
そして、お金が絡んだ瞬間、”好き” の輪郭はぼやけ始める。
お金になるものしか作れなくなる。
締め切りや評価に追われ、自由が奪われる。
誰かの期待を背負いすぎて、好きだったはずのものが嫌いになる。
カフェが好きだからといって、自分の店を開いた人が、経営に追われてコーヒーをゆっくり飲む時間すらなくなることがある。
仕事には責任がついてまわる。
「好きだったこと」も、「やらなければならないこと」に変わった瞬間、義務とストレスが生まれる。「趣味は趣味のままが一番幸せだった」
そう話す人を、何人も見てきた。もちろん、好きなことを仕事にして成功する人もいる。
でも、それができるのは、「仕事として続ける覚悟」がある人だけだ。
“好き” という気持ちだけで飛び込むと、「こんなはずじゃなかった」と思う日が、きっとやってくる。
だから、もし「好きなことを仕事にしよう」と思ったら、「それを仕事にしても、本当に心から楽しめるのか?」と、一度、自分に問いかけてみるのも悪くない。
好きなことは、必ずしも仕事にしなくてもいい。
むしろ、”好きなままでいられる方法” を考える方が、ずっと大事だったりするのだから。