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Real Dystopia 04『働かなくても生きていける世界』MAR 06.2025-Nit.Thursday

「おめでとうございます。あなたの労働義務は解除されました。」

電子音声がそう告げた瞬間、俺は理解した。
もう、働かなくても生きていける。

数年前、日本政府は「ユニバーサル・ベーシックインカム(UBI)」を正式導入した。
すべての国民に、最低限の生活費が毎月支給される。

仕事を辞めても、家賃が払える。
働かなくても、食事に困らない。
医療も無料で受けられる。

誰もが「労働の呪縛」から解放された。
……はずだった。

最初は、人々は自由を謳歌した。
朝の通勤ラッシュは消え、満員電車も過去のものとなった。

カフェは昼間から賑わい、趣味を楽しむ人々が街にあふれた。

しかし、3ヶ月後——

SNSには、こんな投稿が増え始めた。

「毎日が同じことの繰り返しで、何も楽しくない。」
「仕事がなくなったら、人と会話することもなくなった。」
「俺は、何のために生きているんだろう?」

「UBIのある社会では、もう努力する必要はない。」

そう信じていた。だが、それは幻想だった。「政府はUBI受給者の行動を監視しています。」

AIニュースアナウンサーが冷静に伝える。「あなたの社会貢献度が一定値を下回った場合、支給額を減額します。」

政府はUBI受給者の行動データを完全に監視していた。

外出履歴、ネットの検索履歴、消費活動、健康状態。すべてが記録され、スコア化される。

そして、ある発表がなされた。

「社会貢献度が著しく低い者は、支給停止の対象となります。」政府は言う。「社会に貢献しない者に、価値はない。」

「働かなくても生きていける」は、ただの建前だった。何もしない人間は、ただの「負担」として扱われる。やがて、社会は明確に分断された。

上位1%の「エリート層」
AIを操り、資本と権力を独占する者たち。

下位99%の「UBI受給者」
ただ生存を許されるだけの者たち。

そして、政府は次の段階へ進む。

「社会貢献度が一定値を下回った者は、特別居住区へ移動してもらいます。」

そうして、一部のUBI受給者が「消えた」。
誰もその行方を知らない。
誰もそれを疑問に思わなくなった。

人類は「働かなくても生きていける世界」を手に入れた。だが、それは「生きる価値を問われる世界」でもあった。

「働くことは、本当に呪いだったのか?」
それとも、「人間にとって不可欠なもの」だったのか?

俺は問い続ける。
「人間にとって、本当の自由とは何なのか?」


近未来社会のリアル

この物語は「もし、すべての人間が労働から解放されたら?」という未来予測である。

仕事をしなくても生きていける社会。
AIがすべてを管理し、人間はただ生きるだけの存在となる社会。
「価値のない人間」は、次第に消されていくディストピア。

現実世界でも、AIによる労働の自動化は加速している。
ベーシックインカム(UBI)の議論も、各国で進められている。

今はまだ「社会実験」にすぎない。
だが、もしこれが「制度」として定着したら?

あなたは、何のために生きるのか?
あなたの価値は、誰が決めるのか?

その答えが問われる時代が、もうすぐそこまで来ているとしたら——。