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LIFE ESSay 『この世界に「完璧」なんてあるのか?』APR 23.2025-Mor.Wednesday

何かにつけて「完璧」を目指してしまう自分がいる。

予定通りに起きること。 ごはんをちゃんと作ること。 好きな服を着ること。 部屋をきれいに整えること。 SNSでは明るく、感じよく、冗談も忘れず。

どこかで、“きちんとしていない自分”は人に見せてはいけない気がして。 完璧であることは、私を守ってくれる鎧のようだった。



でも、ある日、洗濯機が壊れた。 下着もタオルも洗えなくなって、コインランドリーに行く気力もない。 気づけば、髪もぼさぼさ、冷蔵庫は空っぽ。

SNSはおろか、誰にも会いたくなくなった。

なんだか全部が崩れ落ちた気がして、 ベッドの上で小さく丸まっていたら、 ふと、昔の友達からLINEが来た。

「生きてる? なんか、ふと気になって」



完璧じゃなくても、人は思い出してくれるのか、と思った。 きれいな私じゃなくても、気にしてくれる人がいる。

それだけで、少し泣けた。



この世界には、たぶん「完璧」なんて存在しない。 雑で、揺れていて、間違いばっかりで、 思ってもいないことを言ってしまったり、 うまく笑えなかったりする。

でもその不完全さのなかにこそ、 人間らしさや、愛おしさや、ほんとうのつながりって、宿るんじゃないかと思う。



完璧でなきゃ嫌われる、って思い込んでいたのは、 きっと私の中の小さなこどもだった。

「失敗しても、大丈夫」 「今日、何もできなくても、嫌われない」

そう言ってくれる誰かがいることが、 完璧以上に、私を守ってくれるんだと思う。



今も私は、つい完璧を目指してしまうけれど、 ときどき立ち止まって、自分にこう聞くようにしている。

「ほんとに今、それ必要?」 「無理してない?」



欠けてる部分や、できなかったことを抱えたまま、 それでも誰かと笑い合えたら。

そのとき、 「完璧」より、ずっと素敵な“何か”が生まれてる気がする。

そして私は、その“何か”の名前を、まだ知らないままでいいとも思ってる。