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LIFE ESSay『神様からの手紙─見えない誰かが動かした朝』MAY 10.2025-Mor. Saturday

その朝、つものようにスマホを片手に、コーヒーをすすっていた。


何気なく開いたSNSのタイムラインに、一つの投稿がふっと流れてきた。

画面の中の投稿者は、名も知らぬ誰か。


ただ、そこに書かれていた話が、やけに静かに、心の奥へ染み込んできた。



話の主役は、ある少女だった。
お母さんと二人で暮らしている。
小さな胸に、誰にも言えない寂しさを抱えていた。

彼女には“神様”がいた。
けれど最近、その神様が何だか遠くなった気がして、ある朝つぶやいたのだという。

「神様って、本当にいるの?」

その問いに、お母さんは言葉を選びながら答えた。「……もしいるなら、手紙を書いてみたらどうかな?」

少女は真剣な顔でうなずいた。



翌朝、ランドセルに小さな封筒が入っていた。
宛先には、たった一言。

『かみさまへ』

手紙の内容は、投稿には書かれていなかった。
けれどその後の展開だけで、十分に想像ができた。

母親はその手紙を、実際に郵便ポストに投函したのだという。


「これは届かないよ」とは言わずに。



数日後。



少女の元に、見知らぬ差出人からの返事が届いた。

それは“神様”からの返事だった。

筆跡は丁寧で、言葉は優しく、子どもにもわかるように書かれていた。

「○○ちゃん、手紙ありがとう。ちゃんと届いたよ。君のことはずっと見ている。
悲しい日も、嬉しい日も、君はひとりじゃない」

読み終えた少女は、しばらくその便箋を抱きしめていたという。



投稿には、
それ以上のことは書かれていなかった。

でも私は、涙が止まらなかった。
胸の奥に何かが熱く広がり、



その日から、見知らぬ誰かの優しさが、
日常の空気を少しだけ変えた。



誰が返事を書いたのかはわからない。



郵便局の人かもしれないし、母親が誰かに頼んだのかもしれない。
あるいは、本当に神様だったのかもしれない。

けれど、その「誰か」が動いたこと。
そして、母親が“信じる行動”を選んだこと──
それがすべてだった。



私は、この話を誰かに話したくなった。
でも、うまく言葉にできる自信がない。

だから、こうして文章にして残す。

「見えない誰かの優しさは、確かに届く」
そう信じるだけで、世界は少しだけ、やさしくなれる気がする。



あの日の朝、少女が書いたあの小さな手紙。
それは、誰かの心の中にも、そっと届いていたのだ。


画像
Some letters don’t need an address.” 神様宛の手紙。
返事が来たのは、ほんとうに必要だった朝だった。


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