

春の風が、少しだけ冷たく感じたのは、
あなたの名前を心の中で呼んだからかもしれない。
恋は終わった。
けれど、思い出の中のあなたは、まだ私に微笑んでいる。
あのときの言葉、あのしぐさ、
ふとした瞬間に蘇るその全てが、
私の中で、やわらかく呼吸をしている。
未来に続く愛というのは、
決して「また会うこと」だけじゃないのだと思う。
どこかであなたが笑っていて、
私もそれを想像できる。
たったそれだけで、この日々は少しだけ穏やかになる。
誰かを深く愛した記憶は、
日常のなかで、静かに形を変えながら
私の輪郭をやさしくなぞる。
そして今日も、未来という名前の空を見上げる。
そこにあなたはいないけれど――
確かに、続いている。