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LOVE Story Essay『ただいまの約束』第1章:「冬の東京駅」ー全4章構成ー

東京駅のホームに、一両の特急列車が滑り込んできた。
静かな冬の午後、白く曇ったガラスの向こうに、肩を寄せ合う乗客たちの姿が映る。

ホームの片隅に、一人の男が立っていた。

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冬の東京駅、舞い落ちる雪の中、ひとり佇む老人。手には古びた手紙が握られ、遠くを見つめる瞳に宿るのは、過去への想いか、それとも約束の人への祈りか――。

藤村圭一、70歳。
人生の大半を海外で過ごした男が、今、半世紀ぶりにこの街へと戻ってきた。

彼の手には、一通の手紙が握られていた。
古びた封筒、薄くなったインク。

60年前のものだった。

「あなたが帰ってくると信じています。
いつか、またこの場所で会えますように。」

最後にこの手紙を受け取ったとき、彼はまだ20歳だった。
若さに身を任せ、夢を追い、遠く異国の地へ旅立った。

そして――彼女の元へ、一度も戻ることはなかった。


列車のドアが開く。

人々が次々と降りてくる中、圭一はゆっくりと歩き出した。

「果たして彼女は、まだこの街にいるのだろうか?」

60年の歳月は、残酷なほどに長い。

彼女がもうこの世にいない可能性もあった。
それでも、この手紙の言葉に導かれるように、彼は帰ってきたのだ。


喫茶店「風待ち」

東京駅の地下通路を抜けると、懐かしい場所にたどり着いた。

駅のすぐそばにある、小さな喫茶店。
「風待ち」――彼女が働いていた店だった。

扉を開けると、コーヒーの香ばしい香りが鼻をくすぐる。

だが、店内は様変わりしていた。

カウンターの奥には、彼女の姿はなかった。
代わりに、見知らぬ女性が微笑みながら迎えてくれる。

「いらっしゃいませ。ご注文は?」

圭一は、少し戸惑いながらも席に着いた。

「この店……昔と変わりましたね。」

店主らしき女性が頷く。

「ええ、30年前に前のオーナーが引退して、新しく改装しました。でも、この店を覚えているなんて珍しいですね。」

「実は……昔、ここで働いていた女性を探しているんです。」

「昔の店主なら……」

「いや、店主ではなく、美咲という名前の女性です。」

女性は少し驚いた表情を見せた。

「美咲さん……? ああ、そういえば……」

圭一は息をのむ。

「知っているんですか?」

「いえ、私は直接会ったことはないんですが……お店の奥に古いノートが残っていて、そこに名前が書かれていた気がします。」

そう言って、女性は奥の棚から一冊のノートを取り出した。

ページをめくると、そこには走り書きのような字でこう綴られていた。

「藤村圭一――あなたは今、どこで何をしていますか?」

圭一の胸が締めつけられる。

彼女は、本当に待っていたのだろうか。

いや、待ち続けて、そして……。

「美咲は、今どこに?」

店主は首をかしげる。

「すみません、それ以上のことは分かりません。ただ、もしよろしければ、このノートをお貸しします。」

圭一は、そっとノートを手に取った。


桜並木の記憶

東京駅から歩いて15分。

川沿いの並木道。

そこは、二人がよく歩いた場所だった。

桜の季節になると、薄桃色の花びらが舞い落ち、まるで約束の証のようだった。

「ここに来れば、また会えるかもしれない。」

そんな気がして、圭一は足を運んだ。

ベンチに腰掛け、静かに空を見上げる。

――そのときだった。

向こう側から、一人の女性が歩いてくるのが見えた。

白髪をきれいにまとめ、穏やかな笑みを浮かべたその女性は、どこか懐かしい雰囲気を纏っていた。

そして、彼と視線が合うと、一瞬、時が止まった。

「……圭一さん?」

彼女の口から、その名前がこぼれた瞬間、彼は立ち上がった。

「……美咲?」

心臓の鼓動が、かすかに早まる。

彼女は、ゆっくりと微笑んだ。

「本当に……帰ってきたのね。」

――60年の時を超えて、約束の場所で、二人は再び出会った。


エンディング:次回への伏線

静かに手を握り合う二人。

しかし、圭一はまだ知らない。

この再会には、ある「秘密」が隠されていることを。

そして、それが明かされるとき――

彼の人生は、再び大きく揺らぐことになる。

(第2章へ続く)

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