壊れた夢の跡
夢というものは、壊れる音もなく、ふっと消えてしまうものです。私の夢もそうでした。高校生の頃、構成作家という道を目指して言葉を紡ぐことに憧れた日々。机の上に置かれたノートに思いつくままに書き連ねた文章の数々は、今ではすっかり記憶の彼方です。
いつしか現実が、夢を追う時間を奪っていきました。そして私は建築のインテリアに関わるデザインという道を選びました。建築やインテリア、ブランドの世界で物を作り、人と向き合う日々。それは確かに充実していましたが、心の片隅にはいつも、書くことへの未練が残っていました。
そんな私のもとに、ある冬の日、一匹の猫がやってきたのです。ヴィアンキと名付けたその猫との時間が、私の中の止まった時計を動かし始めるきっかけになるとは、そのときは思いもしませんでした。
ヴィアンキとの冬
ヴィアンキは、どこから来たのかもわからない、不思議な猫でした。ふわふわとした長毛に包まれた白い身体。まるで冬の光をまとったようなその姿に、私は自然と惹かれていきました。
彼女はいつも私を見守るようにそばに座り、何も言わずにただそこにいるだけでした。しかし、その存在がどれだけ私を救ってくれたことでしょう。
心が壊れてしまったような日も、仕事の失敗で打ちひしがれた夜も、ヴィアンキはただ私の隣で静かに見つめていました。時折、「それでもいいんだよ」とでも言いたげに、そっと頭を私の手に擦り付けてくる。その温もりが、私には何よりも大きな支えとなったのです。
光を紡ぐ夜
ヴィアンキが私のもとにいてくれた6年間は、私にとって再生の時間でした。彼女は、私が失った「夢」という光を、静かに取り戻す手助けをしてくれたように思います。
そして、奇しくも彼女が天に召されたのは、クリスマスの夜でした。その時、私はひとつのことに気づきました。人生で壊れてしまった夢や希望は、決して消え去るわけではないのだと。それらは心の中で眠り続け、ふとしたきっかけで目を覚ます。その時、私たちは再びそれを紡ぎ直すことができるのです。
ヴィアンキが教えてくれたその教訓を、私は今日、言葉という形で紡いでいます。
終わりに
今夜、クリスマスの光があなたにとってどんな意味を持つのか、それはわかりません。
けれど、この文章を読んで、小さな希望の光を見つけてもらえたなら、それが私にとって最高の贈り物です。
人生には壊れるものもあるけれど、それを受け入れ、もう一度作り直すことで、新しい光が生まれる――そう信じています。どうか、この夜があなたにとって新たな光を見つける時間になりますように。
メリークリスマス。そしてまた次の夜にお会いしましょう。
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