恵子は広告会社に勤める30代のキャリアウーマン。毎朝スマホのアラームで目を覚まし、仕事のメールに追われる日々を送っていた。
会社では常にチャットや電話の通知が鳴り、家に帰ってもSNSをチェックする習慣がやめられない。そんな彼女の生活は、まさにデジタルに支配されていた。
ある日、彼女は突然頭痛に襲われ、PC画面を見ているだけで目が疲れ、気力が湧かないことに気づく。
「少し休んだ方がいいのかも…」と感じたものの、休む余裕はないと考え、再び仕事に戻った。しかし、その夜、ついに限界が訪れる。スマホを手にしたまま、ソファに倒れ込んでしまったのだ。
翌日、親友の真奈美から電話がかかってきた。恵子の疲れた声に心配した真奈美は、「デジタルデトックスをやってみない?」と提案する。
デジタルデトックス? 恵子は初めて聞く言葉だったが、説明を聞くと「スマホやPCを一時的に使わないことで、心と体をリセットする方法」だと言う。
一瞬迷ったが、恵子は「何も失うものはない」と思い、週末に真奈美と自然の中で過ごすデジタルデトックスを試すことに決めた。実際、スマホを手放すのは予想以上に不安で、離れている間もスマホを手に取ってしまいそうになる。通知を見逃すのではないか、仕事の緊急連絡が来たらどうしよう…頭の中はデジタルのことでいっぱいだった。
真奈美と一緒に緑豊かな公園に着いた恵子は、初めてスマホをポケットにしまい、意識的にデジタルから離れた。最初はそわそわして落ち着かなかったが、しばらく歩いていると、風が肌を撫で、鳥のさえずりや川のせせらぎが耳に入ってきた。ふと気づくと、スマホのことをすっかり忘れていた。
真奈美が「どう?少しはリラックスできた?」と尋ねると、恵子は少し驚きつつも「こんなに心が軽くなるなんて思わなかった」と答えた。彼女はずっと目の前のデジタル機器にとらわれ、周りの世界に気づいていなかったのだ。風景が鮮やかに見え、心の中も徐々にクリアになっていく感覚に包まれる。恵子は、自分がどれだけデジタルに依存していたか、そしてその依存が心をどれほど疲弊させていたかを、初めて実感した。
1時間後、公園のベンチに座り、恵子は大きく息を吸い込んだ。これまでの疲れが嘘のように消えていく。「スマホやPCを使わない時間がこんなにも豊かだなんて、知らなかった」と、彼女は静かに微笑んだ。
真奈美も「たまにはこうやって自分をリセットするのも悪くないでしょ?」と笑顔で応じた。
その後、恵子は定期的にデジタルデトックスの時間を設け、心と体をリフレッシュすることを習慣にした。そして、日常生活に戻っても、仕事の効率が上がり、感情も安定し、何より自分自身と向き合う時間が増えたことを実感していた。
デジタルの波にのまれた生活から一歩踏み出すことで、彼女は自分のペースを取り戻すことができたのだった。
メッセージ:
デジタル機器に囲まれた生活から少し離れるだけで、私たちは新たな発見やリフレッシュの時間を得ることができます。心の声に耳を傾け、自然と向き合うことで、自分自身を取り戻し、新しいチャレンジに向けてのエネルギーを再充電することができるということを伝える物語です。
『One idea per day』の記事にリンクした物語編。
ドクターモモがお届けする内容に沿った『short story』が、より理解し易く参考になると思います。