
テレビのワイドショーで、経済評論家が真剣な顔で言っていた。
「貯金は人生の防波堤です。無駄な浪費を控えて堅実に生きることが大切です」
なるほど、と思う。でも、ふと彼の姿を見たら、妙に気になる。
スーツは一流ブランド、腕にはピカピカの高級時計。足元には磨き上げられた革靴。あれ、貯金しろって言ってる人が、なんでこんなにお金をかけてるんだろう。
不思議に思って友人に話すと、「そういうものよ」と笑われた。
確かに、私たち庶民が実践しろと言われる「倹約」と、彼らの「倹約」は、まるで別のゲームみたいなものなのかもしれない。
本当に堅実な生活をしている人は、目立たない。たとえば、近所のおばあちゃん。
毎日同じ服を着て、スーパーの値引きシールをじっくり見つめ、慎重に買い物をする。
決して派手じゃないけど、静かに自分の生活を守っている。彼女の「倹約」は本物だ。
でも、そんな姿がテレビに映ることはない。
テレビの向こうの経済評論家は、視聴者に向かって「無駄遣いするな」と言いながら、ブランド品に身を包んでいる。
それが彼らのビジネスモデルなのだ。
彼らは「貯金しろ」と言ってお金を稼ぎ、その稼いだお金で、高級ブランドを買う。まるで、教科書どおりの「経済の循環」じゃないか。
でも、それでいいのか?
私たちは、いつの間にか「貯金すべき」と言われる側になり、倹約を美徳としながら、誰かの言葉に振り回されているのかもしれない。
本当に大事なのは、誰かの言う「正解」をそのまま鵜呑みにするのではなく、自分にとっての「ちょうどいいバランス」を見つけること。
たとえば、たまには美味しいものを食べる。
少しだけ高価な服を買って、自分の気分を上げる。節約ばかりにとらわれず、”貯める”と”使う”のちょうどいいところを探すこと。
結局、「貯金しろ」と言われて貯め続けたって、そのお金を使う頃には人生の半分が終わっているかもしれない。
貯金よりも、自分がどう生きたいかを考える方が、よっぽど価値があるのかもしれない。