第一章「再会」
駅前の通りを抜けると、小さなカフェのテラス席が目に入った。
木漏れ日がガラスに反射し、ゆっくりと午後の時間が流れている。
ふと、一人の女性の姿が目に留まった。
白いワンピース。
髪を耳にかけながら、ノートに何かを書きつけている。
指先の動きが、妙に懐かしい。
「……ナオ?」
気づいたときには、名前が口をついていた。
女性が顔を上げる。
目が合った。
「え……?」
ナオも驚いたように目を見開いた。
蝉の声が遠くで響いている。
時間が止まったような気がした。
「……翔?」
ナオの声が、確かにショウの記憶の中のそれだった。
でも——どこか違う。
第二章「過去の記憶」
「久しぶりね」
ナオが微笑む。
ショウは頷き、向かいの席に腰を下ろした。
「いつ戻ってきたの?」
「昨日」
「……どう? 久しぶりの街は」
「変わったようで、変わってない。……ナオも、変わらないな」
ナオはくすっと笑う。
「それ、褒め言葉?」
「もちろん」
懐かしいやり取り。
まるで、あの頃に戻ったようだった。
だけど、どこか違う。
ナオの目の奥に、微かに寂しさが滲んでいた。
「ナオ……何かあったのか」
ほんの一瞬、ナオの目が揺れた。
けれど、すぐに微笑みが戻る。
「何もないわ。ただ、少し考えていただけ」
「何を?」
ナオはカップの縁をなぞりながら、静かに言った。
「……人の縁って、不思議だなって」
ショウはその言葉を飲み込む。
胸の奥で、ざわりとした感覚が広がっていった。
第三章「懐かしさと違和感」
カフェを出ると、風が吹いた。
二人は、昔よく歩いた並木道を並んで歩いた。
「翔、今は何をしてるの?」
「……編集の仕事をしてる」
「へえ、意外。昔は小説を書いてたのに」
ショウは苦笑する。
「もう、書いてないよ」
「どうして?」
「……わからない。ただ、書く意味を見失ったんだと思う」
ナオは寂しげに目を伏せた。
「翔は、昔から物語を作るのが好きだったのにね」
ショウは何も言わず、ただ前を見つめた。
すると、ナオがふと立ち止まった。
「ねぇ、翔。もし……また書いてみたくなったら、私に読ませてくれる?」
ショウは驚き、ナオを見返した。
その瞳は、どこか懐かしく、そして優しかった。
「……考えておくよ」
そう答えたものの、心の中では、何かが少しずつ変わり始めていた。
第四章「交錯する時間」
その夜、ショウはホテルの部屋に戻っても、ナオの言葉が頭から離れなかった。
「人の縁って、不思議だなって」
「もし……また書いてみたくなったら、私に読ませてくれる?」
彼女の言葉は、何かを示唆しているようだった。
そして——ショウは夢を見た。
懐かしい光景。
木漏れ日の下で、誰かと手を繋いでいる自分。
「また、会えるよね?」
優しい声が聞こえる。
その声は——
「ナオ……?」
ショウは目を覚ました。
額にはうっすらと汗が滲んでいた。
「……夢?」
しかし、胸の奥に残る感覚は、あまりにも鮮明だった。
エピローグ「再会の意味」
翌日、ショウはナオをもう一度訪ねた。
「話があるんだ」
ナオは驚きながらも、静かに頷いた。
二人はもう一度、並木道を歩く。
「俺……やっぱり、また書きたいと思う」
「……本当に?」
「ああ」
風が吹いた。
「お前と話して、思い出したんだ」
「何を?」
「俺、物語が好きだった」
ナオはゆっくりと微笑んだ。
「なら、きっと大丈夫」
ショウは深く頷く。
そして、その瞬間、確信した。
この再会は、必然だったのだと。
第2巻「記憶の影」へ——
ショウの中に、少しずつよみがえり始める「書くこと」への衝動。
だが、それと同時に、ナオの瞳に宿る影もまた、気になり始めていた。
彼女は何を隠しているのか?
この再会には、まだ続きがある——。
『風の約束』第2巻「記憶の影」、近日公開——。
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