「もう枯れるだけなら、諦めた方がいいのかな……。」
優子は窓辺の鉢植えを見つめながら小さくため息をついた。くすんだ葉が何枚も垂れ下がり、まるでその植物が力尽きたかのように見える。
かつて鮮やかな緑で部屋を彩ってくれていた観葉植物。だがこの冬、曇り空の日々が続き、どんなに水をやっても元気を取り戻さなかった。
「日差しが弱いんじゃ、仕方ないよね。」
優子は自分に言い聞かせるように呟き、鉢を窓際からキッチンの隅に移した。日の当たらない場所に置いたそれを眺めながら、これ以上手をかける気力も湧かず、諦めの気持ちが心に広がった。
だが、その日の午後、不意に窓の外から明るい光が差し込んだ。
「……久しぶりの晴れ？」
部屋の中が急に明るくなり、優子は思わずカーテンを開けた。目の前に広がる快晴の空。冬の冷たい空気とは裏腹に、太陽の光はどこか心を温めるものだった。
「やっぱり……戻そう。」
優子は先ほど移したばかりの鉢植えを再び窓辺へと戻した。
翌朝、優子はカーテンを開けると、昨日の光を思い出して窓辺に目をやった。すると、くすんでいた葉の先がどこか光沢を取り戻しているように見えた。
「え、気のせい……じゃないよね？」
優子は鉢植えに近づき、そっと葉を触った。その冷たさの中に、わずかながらも命の鼓動を感じる。
「植物はね、人の気持ちを映す鏡みたいなものよ。」
昔、母が庭で花を育てていた時の言葉がふと蘇る。
その時、優子は初めて気づいた。自分自身もずっと曇り空のような気分だったことに。
数週間後、鉢植えには新しい若葉が顔を出していた。小さな緑の葉は、まるで「ありがとう」と語りかけてくるようだ。
優子は窓を開け、新鮮な朝の空気を部屋に入れた。鉢植えを撫でながら、自分自身にも優しく言い聞かせる。
「また少しずつ、一緒に元気になろうね。」
窓辺の光は今日も優子とその植物を優しく包み込んでいる。小さな奇跡が続くその場所で、新しい日々が静かに始まっていた。
エピローグの挨拶
「最後までお読みいただき、ありがとうございました。小さな光が誰かの心を照らすように、この物語が皆様の日常に少しでも温かな気持ちを届けられたなら幸いです。次回もどうぞお楽しみに！またお会いしましょう。」
投稿スケジュール
- No.2: 次回火曜日 AM7時投稿予定
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