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ファンタジー小説 第7話: 言葉の繭、未来の種

その手紙は、雨の降る夜に片桐の元へ届けられた。差出人のない封筒。中には一枚の紙切れが入っていた。紙には手書きの文字でこう記されている。

「言葉は繭。未来を育む種を守るもの。」

差出人も意図も不明。だが、この手紙は片桐とMomoが進めていた「言葉プロジェクト」と奇妙に符合している。片桐は眉をひそめながらもその紙を机に置いた。

「Momo、ちょっとこれを見てくれないか?」
翌朝、片桐が手紙を見せると、Momoは目を見開いた。

「これ…なんだろう。誰が送ったのかな?」
「それが分からないんだ。消印もないし、紙の質感もどこか不思議だ。」

画像
手紙に込められた未来へのメッセージ――言葉は繭となり、新たな種を守る。その真意を探る旅が今、始まる。

手紙はどこか異質な存在感を放っていた。紙質は古くもなく新しくもない。文字は確かに手書きだが、どことなく人間味のない精巧さを感じさせた。

「未来から届いた手紙、なんてね。」Momoは冗談めかして笑ったが、その言葉が意外と真実味を帯びているように思えた。

片桐とMomoの「言葉プロジェクト」は徐々に注目を集め始めていた。それは、言葉が持つ記憶と力を未来へ受け渡すための活動だった。人々が大切にしてきた言葉を集め、それを保管し、次世代に残すというアイデアは、多くの共感を呼んでいた。しかし、同時にその目的が漠然としているとの批判も受けていた。

「この手紙、何かのメッセージなのかな。」Momoが手紙をじっと見つめながら呟いた。
「だとしたら、この言葉に秘められた意味を考えなければならないな。」片桐は真剣な表情で頷いた。


「言葉は繭」
このフレーズに込められた意図を探るため、二人は手紙を分析することにした。文字の筆跡、使用されたインク、紙の産地などを調べたが、有益な情報は得られなかった。しかし、その中で片桐はふとした仮説に行き着く。

「Momo、この言葉自体にヒントがあるとしたらどうだろう?繭というのは、外界から中身を守る役割がある。そしてその中で新しい命が育つ。」
「うん、つまり言葉が未来を守り、育むものだって言いたいのかな?」

二人はこの仮説を軸にプロジェクトの方向性を再確認することにした。これまで集めてきた言葉たちが、それぞれに未来への可能性を秘めているのだと考えると、手紙の内容が不思議と腑に落ちた。


新たなステップへ
「言葉が繭になるなら、私たちはその中にある種を見つけて育てないといけないね。」Momoは小さな声でそう言った。その言葉は、これまで進めてきたプロジェクトの意義を再確認するきっかけとなった。

片桐は頷き、集めた言葉を改めて整理し始めた。それぞれの言葉が持つ意味や背景を調べ、その言葉が未来にどんな影響を与える可能性があるのかを考察していく。

手紙に書かれていた言葉は短くとも、そこには深い意味が込められているようだった。片桐はプロジェクトの新たな指針をノートに書き込んだ。

「言葉は未来への繭であり、そこにある種を守り、育てる存在だ。」

二人はこの手紙の意味を軸に、プロジェクトをさらに発展させるための計画を練り始める。手紙が届いた夜の雨はすでに止み、空には新しい朝の光が差し込んでいた。未来へ向けた言葉の旅が、ここから再び動き出そうとしていた。


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2020年5月2日  · 

Lo schianto. L’incredulità. Il crollo. L’orrore.