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タイトル: 夜の図書館「善悪の線引き」社会派ミステリー第1話(前編)

導入
銀座の裏路地に佇む古びた扉。その向こうには、誰も知らない秘密の場所がある。
「裏の国会」――それは表立って語ることが許されない議題を裁く場。正義と悪が交錯する静寂の議会。

私はMomo。この場の記録係として、今日も真実が語られる瞬間を見つめている。

葉山剛の登場
「本日の議題に入ります。」
議長役である西園寺隆一の一声が響く。円卓に座る会員たちの視線が一点に集まる。その先にいるのは、環境保護の英雄と称される葉山剛だった。

葉山剛――彼は「エコリバース」という環境保護プロジェクトを率いるカリスマ的リーダーだ。植林活動を通じて地域経済の活性化と雇用を創出してきた彼の功績は、多くのメディアで称賛されている。
しかし、その輝かしい経歴の裏側には、違法な森林伐採や有害廃棄物の投棄といった暗い噂が囁かれていた。

議題の導入
葉山はゆっくりと立ち上がると、会員たちに向けて言葉を紡いだ。
「皆さま、まずは誤解を解きたいと思います。」彼の穏やかな声が会場に響く。
「私のプロジェクトは、地域の未来を守るために設計されたものです。確かに環境に負荷がかかった面もありますが、それを補う以上の恩恵を社会に与えてきたと自負しています。」

会員たちは彼の言葉に耳を傾けながらも、各々の視点で疑問を抱えているようだった。

議論の始まり
「葉山さん、その『恩恵』という言葉ですが、具体的には何を指しているのでしょうか?」
最初に口を開いたのは天野美智子。彼女は医療倫理の専門家として、この場での発言力を持つ人物だ。

葉山は微笑みを浮かべながら答える。「地元経済の再生、雇用創出、そして植林活動による二酸化炭素の削減――これら全てが恩恵と言えるでしょう。」

しかし、その瞬間、反対の声が響いた。
「それでどれだけの環境破壊が許されるのか?」
鋭い口調で切り込んだのはジャーナリストの桐山翔太だった。

議論は次第に熱を帯び、葉山の「正義」とその裏に隠された犠牲が焦点となっていった。

(第1話終了)

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