Home

社会派ミステリー:第2話「消えた証拠」

マンション「桜坂タワーズ」の前に立ち、斉藤遼は深く息を吐いた。
高級住宅街の一角にそびえ立つその建物は、夜になっても静寂に包まれている。
窓の明かりはまばらで、人の気配も感じられない。
まるで、そこに住む人々が”何かを恐れている”かのようだった。

遺体が発見された事件現場。
そこには、消された証拠 があるはずだ。


現場に残された痕跡

マンションのセキュリティは厳重だったが、こうした場所では管理人や清掃員が最も多くの情報を持っている。
斉藤は、昼間に一度接触した管理人をもう一度訪ねることにした。

管理人室のドアを軽くノックすると、奥から戸惑ったような声が聞こえた。

「……またあなたですか?」

「ええ、少し話を聞きたくて。田嶋圭吾さんのことです。」

管理人は躊躇していた。彼の手は、小刻みに震えている。
斉藤は静かに言った。

「何を恐れているんですか?」

管理人は一瞬目を泳がせたが、誰もいないことを確認すると、低い声でささやいた。

「ここでは……余計なことは言わないほうがいいんです。」

「なぜです?」

「そういう”決まり”なんですよ。」

決まり。
管理人はそれ以上、何も言わなかった。

しかし、その言葉だけで十分だった。
ここでは、”話してはいけない”何かがある。


監視カメラの消えた映像

情報が封鎖される時、最も確実なのは”映像”だ。

画像
地下駐車場の監視カメラ映像が消された理由とは? 消えた記録の先にある“隠された真実”を追うジャーナリストの物語——『報道されない死』。


斉藤は、マンションの監視カメラの記録にアクセスする方法を考えた。
管理人が無理なら、清掃員か警備員に接触するしかない。

マンションの地下駐車場を歩いていると、夜勤の警備員が巡回しているのが見えた。
制服姿の男は、何かを隠しているように落ち着きがなかった。

斉藤は警備員に近づき、話しかけた。

「すみません、少しお聞きしたいことが。」

「……なんでしょうか?」

「田嶋さんが亡くなった日の、監視カメラ映像を見せてもらえませんか?」

警備員の顔が一瞬、こわばった。

「それは……お見せできません。」

「なぜです?」

「すでに……消されています。」

「消された?」

「該当時間帯の映像は、記録に残っていません。」

斉藤は確信した。
意図的に削除された監視カメラ映像。それこそが”事件の核心”に違いない。


何者かの影

映像が消された時間帯——事件が起きたとされる夜11時から翌朝5時までの6時間。

「普段は、監視カメラの映像を削除することなんてあるんですか?」

「ありえません。通常、映像は最低30日間は保存される規則です。」

「なら、なぜ消された?」

「……わかりません。でも、その日、マンションに”不審な男”が出入りしていたという話があります。」

「不審な男?」

「住人ではない人物が、深夜に建物へ入ったらしい。でも、カメラの映像が消えてしまっているので、確認できません。」

斉藤の脳裏に、ひとつの可能性が浮かんだ。

田嶋圭吾は、この”不審な男”と会い、そして殺されたのではないか?
それとも、彼自身がその男だったのか?

事件は事故ではなく、”誰かに消された”。

次に調べるべきは、“その男”が何者なのか ということだった。


次回予告(第3話):「不審者の正体」

次回、斉藤は事件当日のマンションの住人リストを入手し、”不審な男”の正体を追う。
だが、その調査を始めた直後、斉藤のもとに謎の脅迫メッセージ が届く。

「お前も消されるぞ。」

何者かが、確実に事件の真相を隠そうとしている——。

ハッシュタグ

#社会派ミステリー #報道されない事件 #隠された真実 #監視カメラ映像 #未解決事件 #情報操作 #証拠隠滅 #高級マンション殺人 #政府の陰謀 #ジャーナリズムの闇